日本産婦人科・新生児血液学会 事務局

産業医科大学
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小児科血液専門医から見た産婦人科医との連携–過去・現在・未来―

産業医科大学名誉教授・北九州八幡東病院長   白幡 聰

 昭和54年に産業医大に赴任して間もなく、産婦人科の教授から電話がかかってきました。「先生は交換輸血をしたことがありますか?」という問い合わせでした(私が新生児医療を専門にしていることはすでにお伝えしてありました)。そこで、私は交換輸血をテーマに学位をとったことをお話したところ、血液型不適合による高ビリルビン血症の新生児の交換輸血を依頼されました(後から聞いた話では近隣の産婦人科の先生方にお願いしたが、皆、断られて、私のところにお鉢がまわってきたとのことでした)。このエピソードに象徴されるように、かっては産婦人科医と小児科医の連携は、例外的なケースを除くとかなり希薄でした。

 しかしながら、新生児がかかる血液疾患、たとえば母児間血液型不適合による溶血性貧血、胎児母体間輸血症候群、分娩外傷による出血性貧血、neonatal isoimmune thrombocytopenia(NAIT)、ITP母体から生まれた新生児の管理などでは産婦人科医と小児科医の連携が極めて重要です。凝固異常症にしても、新生児のDICは仮死など出生前のエピソードがトリガーになることが稀ではありません。先天性凝固異常症では最近、周産期の管理の重要性が強調されています。私がライフワークとしてきた新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症の予防に産婦人科医と小児科医の連携が必要なことは言うまでもありません。そこで1976年、相馬先生、品川先生、真木先生が中心になり始まった産婦人科血液研究会に新生児領域の血液疾患に関心のある小児科医も参加するようにお誘いいただいた時、喜んで参加させていただきました(ちなみに研究会としては最後の学術集会になった第15回産婦人科・新生児血液研究会の会長は私の恩師であり、本学会の理事長も務められた故山田兼雄先生でした)。以来,20年以上が経過しましたが、産婦人科の先生方と一緒に楽しく有意義な勉強をすることができたことを感謝しています。山田先生が会長をされた翌年(1991年)から名称が日本産婦人科・新生児血液学会となり、2010年に小林隆夫会長のもと第20回学術集会が盛大に開催されたことは記憶に新しいところです。この間、小児科側からは、長崎大学、辻 芳朗教授、信州大学、小宮山惇教授、私、東京女子医科大学、仁志田博司教授、奈良県立医科大学、吉岡 章教授そして九州大学原 寿郎教授の6名が学術集会長を担当し、本学会の発展に寄与できたと思っています。

さて、日本産婦人科・新生児血液学会のこれからです。繰り返しになりますが、新生児が罹患する血液疾患の多くは産婦人科医と小児科医の連携による管理が大切です。最近、日本小児科学会から新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドラインが発表されましたが、この作業は寺尾先生のご指導と西口先生、松田先生はじめ産婦人科の先生方のご尽力がなければできませんでした。本学会が新生児血液疾患に関する情報発信基地として益々その役割を高めていって欲しいと思います。