産業医科大学
小児科学教室内
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北海道大学病院 産科・周産母子センター
森川 守(平成6年卒)
おそらく世の中に大量出血で怖い思いをしたことがない産科医はいないでしょう。「出血、大サービス!」の大当たりは遠慮したくても、突然身にふりかかってくる可能性は常にあります。産科医を続けていれば、大出血をなんとか止血した「武勇伝」は知らず知らずのうちに増えてゆきます。また、不運にも「脛に傷を持つ」ことになった産科医がいるのも事実です。ただし、「背中を冷たい汗が伝うのを感じながら、止血すべく格闘する。」それを「産科の醍醐味」と呼ぶ時代は過ぎました。
(ただし、いざという時に備えて「武勇伝」を先輩がたからたくさん聴いておくことも重要です。そして、その際に大切なことは「止血方法」だけでなく「出血した経緯」を聴いて反面教師にすることです。)
医学部学生が手洗いをして帝王切開術に入った後に帝王切開術に関する感想を聞くと、以前は「分娩という生命の神秘に感動しました。」が多かったのですが、近年は「こんなに出血する手術を見たのは初めてです。」が多いです。近年、医学部学生でさえもますます出血への意識(恐怖)が高まっているからかもしれません。
われわれ産科医にとって最も重要なミッションのひとつが「出血のコントロール」であることはいつの時代も一緒です。しかし、他科と同様に産科も「出血を止める」時代から「出血を予防する」時代にすでになっています。そのためには、「産科血液学」の知識が必要です。
例えば、妊娠高血圧症候群に関連する、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離、子癇(頭蓋内出血、PRESを含む)、産科DIC、どれをとっても発症予知、早期発見ならびに治療のためには「血液学に関する知識」が産科医にも必要です。
出血と戦う産科医には、「日本産婦人科・新生児血液学会」へのご入会を是非ともお勧めします。
そして、本邦での母体死亡の原因の首位が「出血(頭蓋内出血を含む)」でなくなる日を目指し、われわれとともに「産科血液学」の見識を深めつつ、新たな知見を見いだしませんか。